スマホの光だけが浮かぶ部屋に、着信音が鳴った。
友人のミキ。
ジャカルタからで、時差は2時間。
「ねえ、私いま何してるんだろうって思って」
受話器の向こうで、エアコンの低い音がずっと続いてる。
彼女は商社マンと結婚して、仕事を辞めて、帯同して8か月。
恋愛系ショート動画の企画のネタ集めで、商社マンと付き合った人、結婚した人、別れた人に話を聞いた。
商社マンと結婚したいが出会えたとして、自分は選ばれるのか。
結婚したら、あの華やかなイメージ通りの毎日が来る?
駐在がついてきたら、自分の仕事はどうなるんだろう。
外資やコンサルや医者と比べて、この選択で合ってるのかな。
いろいろ悩みはあると思うけど、先に出会い方からいくね。
商社マンと出会う8つのルート、確率が高い順に本音で
最短は人づて。商社は同期のつながりが濃い
商社マンの結婚相手、誰に聞いても紹介か社内が多かった。
理由は単純で、同期の飲み会が異様に多いから。
20代のうちは毎週のように同期会があって、そこに誰かの彼女や友達が呼ばれる。
商社マンの友達を持つ女友達と仲良くなる。
これが最短だったりする。
遠回りに見えるっしょ?
でも話を聞いた既婚の商社妻、半分以上がこのルートだった。
頼み方にもコツがある。
商社の人を紹介して、じゃ動かない。
彼の同期で結婚を考えてる人いる?ここまで絞ると、相手も顔が浮かぶ。
社内や取引先の結婚も多い。
受付や秘書、営業事務、取引先の担当者。
毎日顔を合わせる相手に落ちるのは、どの業界も同じじゃん。
合コンも幹事が商社マンなら空気が違う。
気をつけたいのは、合コン慣れしすぎた層。
毎週やってる人はその場が楽しいだけで、結婚の話は出てこない。
私も一回混ぜてもらって、帰り道で気づいた。あの時のあれは飲み会であって出会いじゃない。
アプリと結婚相談所は、急ぎ具合で使い分ける
知人のアヤは、アプリの検索欄に商社って打ってた。
出てくる出てくる!
ただ、ここに落とし穴があってさ。
商社には総合商社と専門商社があって、年収も駐在の頻度もまるで違う。
プロフィールの商社勤務だけじゃ、どっちか分からない。
アヤは3人と会って、3人とも専門商社だった(笑)
悪いって話じゃないよ。
思い描いてた生活と違うなら、最初に確かめるしかないってだけ。
会社名を聞くのが気まずいなら、扱ってる商材を聞けばいい。
資源とかインフラって答えが返ってきたら、総合寄り。
アヤいわく、プロフィールで反応がよかったのは英語の資格より海外の写真。
話のきっかけになるからね。
相談所は逆に、駐在前で急いでる人が来る場所。
初回の面談で駐在の予定を言ってくる人までいる。
半年以内に決めたい人が多いから、話が進むのは速いわ。
その分、じっくり恋する時間は削られるんだけど。
英会話、朝のジム、平日夜の大手町。意外な穴場
商社マンの生活圏は狭い。
大手町、丸の内、虎ノ門、あとは駐在前に通う英会話教室。
平日の朝ジムに行く人が多いのは、本人たちから直接聞いた話。
大学のつながりも強くて、サークルのOB会に顔を出すとなぜか商社率が高い!
街コンや婚活パーティーは、正直言って打率が低かった。
出会える数は多いのに、結婚の話まで進んだ人をひとりも知らない。
ルートは8つあっても順番は決まってる。
人づて、社内や取引先、合コン、アプリ、相談所、英会話やジム、大学のOB会、イベント。
上から順に、本気の人に当たる確率が下がっていく。
商社マンと結婚したあとのリアル。年収より先に消えるもの
30歳で年収1000万、なのに家に人がいない
商社妻のリナに聞いたのは、平日の夜のこと。
夫は週の半分が出張で、残りは接待か同期の飲み。
帰宅は日付が変わってから。
年収は30歳前後で1000万に届く人が多いし、社宅は都心の広い部屋。
家賃の負担が軽い分、貯金のペースは友達の誰より速いって。
外から見れば勝ち組そのもの。
けど彼女が最初に口にしたのは、お金の話じゃなかった。
「子どもの熱が出た夜、電話が誰にもつながらなかった」
ワンオペって言葉で片づけたくないんだって。
言葉が軽すぎるからって。
聞きながら、私はメモを取る指が止まってた。
浮気の心配は、聞いた全員が一度はしてる。
実際に揉めた話が出たのは、飲み会より駐在中の単身の時期だった。
専業主婦か共働きか。決めるのは希望じゃなく辞令の日付
商社マンの妻が仕事を辞める割合は高い。
理由は本人の希望より、転勤と駐在のタイミング。
続けたかった人ほど、辞令が来た日の話をすると声が低くなる(泣)
リナは辞めなかった。
そのかわり夫の駐在を単身で行かせて、3年間の別居婚。
周りに何を言われたか、想像つくよね。
今も同じ会社で働いてて、後悔はないって言い切ってた。
3年のあいだ、夫婦の会話は業務連絡みたいになったって。
どっちを取るか、なんだよね結局。
後悔する人としない人、分かれ目はひとつだけ
話を聞いた人たちの中で、後悔の有無ははっきり分かれた。
年収でも駐在先でもない。
夫の肩書きで、自分の人生の空白を埋めようとしたかどうか。
これ、ミキが自分で言った言葉。
「商社マンの彼氏がいる私、が好きだった」
言った瞬間、受話器の向こうで息が止まった音がした。
ドクン、と私の鼓動も一回跳ねた。
肩書きに惹かれるのは悪くないよ。
会社名は家に帰ってこないし、夜中の電話にも出ないけどね。
後悔してない人は、夫がいない時間の使い道を先に持ってた。
仕事でも、習い事でも、ママ友の集まりでもいい。
空白を自分で埋めてる人は、名刺に寄りかからずに済む。
駐在帯同、仕事を辞めるか迷ってる人へ
駐在前に結婚が増える理由。愛の大きさじゃなく辞令の時期
商社マンのプロポーズは早い。
付き合って1年で結婚の話が出るのは珍しくもない。
理由は駐在。
家族で行けば、住居も手当も家族向けになる。
ひとりで海外に出ると、夜の部屋が広すぎるしね。
辞令から出発まで数か月しかないから、決断を急かされる。
辞令が出た週にプロポーズされた人が、聞いた中に二人いた。
ここで焦る人が多いんだけど、焦って当然でしょ。
急かしてるのは愛の大きさじゃなくて、会社のカレンダーだから。
確かめる質問はひとつでいい。
駐在がなくても、今プロポーズした?
この問いへの答え方で、だいぶ見えるよ。
帯同したミキの毎日。時間はあるのに名前がない
ジャカルタでのミキの一日を聞いた。
朝は夫を送り出して、家事は手伝いさんがやってくれる。
時間はある。
語学学校に通って、駐妻のランチ会に出て、夜は夫を待つ。
駐妻、つまり駐在員の妻たちの集まり。
そこには夫の会社と役職で席順が決まる空気があるらしい。
前の仕事のリモート継続は、社内規定で無理だった。
国によっては配偶者の就労にも制限がかかる。
「私、ここでは誰かの奥さんとしか呼ばれないんだよ」
ため息が受話器越しに落ちてきた。
それでも帰国は考えてないって。
理由を聞いたら、夫が毎晩帰ってくるからだって。
日本にいた頃より、二人で食べる夕飯が増えた。
英語もインドネシア語も、気づいたら聞き取れるようになってた。
同じ月日の中に、この両方が入ってる。
辞める前に、辞めない道を全部並べる
帯同は、辞めるか行かないかの二択じゃない。
配偶者の帯同で休職できる制度を持つ会社が増えてて、最長で2年や3年。
人事に聞く前にあきらめる人が本当に多いんだって。
リモートで続けられる職種なら、就労ビザと社内規定の確認が先。
現地で働く道もあるし、帰任後の再就職に効く資格を取る人もいた。
帯同しないで別居婚、あとから追いかける後追い帯同もある。
半年遅れて行った人は、その間に引き継ぎを終えて、退職じゃなく休職にできてた。
全部並べてから決めた人は、辞めた人でも顔つきが違った。
カフェで話を聞いたとき、目線がずっと上がってたのを覚えてる。
自分で選んだ、って顔。
辞令に選ばされた人は、その顔ができない。
外資、コンサル、医者、銀行員と比べたら商社はどう見えるか
比べるために、女子会を一回開いた。
集めたのは商社、外資メーカー、コンサル、勤務医、メガバンク、夫の職業が全部違う5人。
聞きたかったのは、夫がいない時間の種類。
転勤の半径と、帰ってこない時間帯で見る
商社は転勤の半径が地球で、いない時間は夜と出張。
コンサルは転勤がほぼないかわりに、深夜と土日がなくなる。
案件が変わるたびに夫の顔色も変わるって、コンサル妻は笑ってた。
深夜のタクシーが止まる音で、帰宅を知るんだって。
勤務医は当直と呼び出し。
家にいても電話一本で出ていくし、地方の関連病院に飛ばされる年もある。
当直明けの寝顔を見て、起こさないように子どもと外に出る休日。
銀行員は2、3年ごとに全国どこでも動く。
年収は商社より下がるけど、夜は家にいる日が多いって。
引っ越しのたびに、子どもの転校がついて回るけど。
外資は年収の伸びが速い分、突然の組織変更で夫の席がなくなる話を聞く。
転勤はほぼない。
どの職業も、何かが家から消える。
消えるものが違うだけ。
商社妻が小さい声で言った。
「うちは駐在の話が出た瞬間に、家の空気が変わった」
選ぶ基準は、自分が何を手放したくないか
収入を守りたいなら、商社か銀行。
自分の仕事と住む街を守りたいなら、コンサルか外資。
夫と夕飯を食べる回数を守りたいなら、ぶっちゃけどれも厳しい(笑)
だから比べる相手は職業じゃなくて、自分の譲れないものの方。
女子会の帰り道、5人が同じことを言ったのがまさかだった。
「結婚してからの方が、夫の仕事を好きになった」
仕事を理解した人だけが、その仕事に取られる時間を許せる。
今日からできること。ショート動画の台本ふうに
シーン1、夜のベッドの上。手元だけ映すカメラ。
アプリを開いて、検索条件を年収から勤務地に変える。
大手町、丸の内、虎ノ門。
プロフィールに商社と書いてある人には、商材を聞く。
「どんなものを扱ってるの?」
この一言で、総合か専門かが見えてくる。
最初のメッセージは、はじめましてより海外の写真の場所を聞く方が返ってくる。
シーン2、3回目のデート。店の照明は暗め。
聞くのは一つだけだよ。
「海外、いつ行く可能性あるの?」
答えの中身より、見るのは表情。
目をそらす人は、駐在の話を彼女とする準備がまだない。
即答する人は、もう帯同を頭に入れてる。
どっちも情報だから、その場で判断しなくていいよ。
2年以内って答えが返ってきたなら、次のデートで帯同の話を出していい。
シーン3、彼から結婚の話が出た夜。帰ってから紙に書く。
彼に駐在がなかったら、今この人と結婚したいか。
仕事を辞めた3年後の自分を想像して、顔が上がるか。
書き終えたら、翌朝もう一回読む。
夜に書いたことは、朝に読むと別の意味になるからさ。
その紙は捨てないで、話が進むたびに読み返すといい。
シーン4、彼との会話。
「帯同するなら、私の仕事はどうなるか一緒に調べたい」
辞めるとも行くとも言わない。
調べたい、で止めるのがコツ。
調べる項目は三つ、休職制度、就労ビザ、帰任の時期。
その返事に、彼が何を手放す覚悟があるかが出るからね。

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