撮影の合間、いつものカフェ。
「ねぇ、銀行員ってどこにいるの?」
同期のユカがスマホをこっちに向けてきた。マッチングアプリの職業欄に、金融、金融、金融。並んだ写真を眺めながら、彼女の指がカチカチと画面を叩く。
「これ、本物かな…」
その一言から、恋愛ショート動画の企画が一本立ち上がったってわけ。
現役と元を合わせて銀行員6人。銀行員と付き合った経験のある女性8人。3週間かけて聞いて回った。
銀行員はどこにいるのか、生活から逆算してみた
平日の夜に会えない理由
まず、平日夜の合コンは空振りが多い。
支店勤務の男性いわく、退勤が20時を回る日が続くんだって。帰ってからも資格の勉強。証券外務員、FP、宅建。銀行員の週末はテキストとセットなのさ。
(え、デートいつするの…)
と、私も固まった(笑)
ここに逆に光がある。 出会いに使える時間が少ない人ほど、目的がはっきりした場を選ぶ。結婚相談所に銀行員が普通にいるって話は、ここから来てるんだと思う。
春と秋、異動の直後に出会いが動く
取材した6人のうち4人が、転勤を経験していた。
知らない土地で、知り合いゼロ。 そこで頼るのが同期のつながりと、地元の同窓会。
銀行は同期の人数が多い。高校や大学の同窓会に一人は銀行員がいる確率、けっこう高いよ。ユカが「同窓会とか行かないし」って顔をしかめたけど、次の週にはLINEが来た。
「元カレの友達、銀行員だった(泣)」
まさかの近さ!
出会い方を確率とコストで並べると
紹介と同窓会は、費用ゼロで信用が最初からある。当たるかどうかは運だけど。
マッチングアプリは母数が一番大きい。職業を金融、最終ログインを3日以内に絞ると、動いている人だけが残る。勤務先まで書く人は少ない。自己紹介文の中の、資格や部署っぽい言葉を拾う方が近道だわ。
リサーチのつもりで自分のアプリも同じ条件にしてみたら、その日のうちにいいねが3件。変な声が出た(笑)
結婚相談所は費用がかかる分、職業の証明がある。偽物に振り回される時間を買うと思えば、意外と高くない。相談所で会った行員は、初回から結婚後の住まいの話をしてきたと、女性が目を丸くしてた。速い。
合コンは、幹事が銀行員なら当たり。そうじゃないなら期待しすぎないのが無難かな。
ジムや習い事は長期戦。そのかわり、そこで会った人は仕事の顔じゃない分、話が早いっしょ。
会う前に整えておく三つ
出会いの場に行く前に、直しておくと返信率が変わるところがある。
写真は普段着の一枚を入れる。スーツの相手にスーツで返すと、仕事の延長に見えるらしい。 趣味欄には、本か運動か、続けているものを一つ。銀行員の男性は落ち着いた趣味の人が目立つから、話の入口になる。 自己紹介の最後に、人の仕事の話を聞くのが好きと一行。これだけで返信が増えたって、ユカが画面を見せてきた。
なんでそんな単純なことで…
そう思うでしょ。相手は一日中、数字と説明に追われてる人なんだよ。
銀行員が結婚相手に求めていたのは職業じゃなかった
元銀行員が話してくれた、避ける女性
取材で一番ざわっとしたのがこの話。
30代の元銀行員の女性が、同僚の男性たちの会話をこっそり教えてくれた。
「金遣いが荒そうな子は、最初の食事で外される」
店の選び方、ブランドバッグの話題、SNSの露出の多さ。見られているのはそこだった。
理由を尋ねたら、融資を扱う人ほど家計が崩れる場面を日常で見ているからだと。
なるほどすぎる!
反対に、家計簿アプリを見せてきた子に、その場で結婚を意識したって話も出てきた。
銀行員の妻の職業、聞いた限りで
釣り合うかどうかを気にする声、めちゃくちゃ多かった。
取材した6人の結婚相手は、同じ銀行の人が3人、看護師が1人、事務職が1人、残りは未婚。 学歴を条件に挙げた人はいなかった。共働きを希望した人は5人。
社内結婚が多いのは、単純に接点の量。支店で毎日顔を合わせるんだから当然っちゃ当然。 外の人が入り込む余地は、その残りの枠。狭いけど、ゼロじゃない。
自分の職業が地味だからって引く理由は、ここにはなかった。
年齢は見られている?
年齢の質問、取材ノートの端に何度も書いてあった。
結婚した行員の相手は、同い年から3歳下までが多かった。年上と結婚した人も1人。
数字より効いていたのは、結婚の時期を自分の言葉で言えるかどうか。来年、とか、転勤が落ち着いたら、とか。 ふわっとしたままの人は、真剣な相手ほど離れていく。
身辺調査の噂、聞いた範囲で
身辺調査ってあるんですか、と口にした瞬間、テーブルの空気がピタッと止まった。グラスの氷がカランと鳴る音だけ。自分の声、たぶん裏返ってた。
正式な調査を受けたと言った人は、6人の中にはいなかった。 とはいえ、結婚前に上司から相手の家族の職業を聞かれた人が2人。借金の有無を確認されたと話す人も1人。
どこまでが慣習で、どこからが噂なのか、私には線が引けなかった。
言えるのは一つ。 借金と、家族と、お金の使い方は、結婚前のどこかで必ず話題になるってこと。
条件で選んでる、と思われたくないなら
ユカが一番気にしてたのがこれ。
「銀行員だから好きになったんじゃないって、どう伝えればいいの?」
答えは聞いた側の話にあった。 銀行員の男性が心を開いたきっかけ。仕事の愚痴を最後まで聞いてくれた夜。休日の勉強を邪魔せず、隣で本を読んでいた時間。
職業を褒めるんじゃなくて、その人の一日を見る。 これに尽きるんだよね。
付き合った先の現実、転勤と飲み会と勉強
転勤の話は最初にしておく
銀行員と3年付き合った女性の話。
付き合って1年目の3月、突然の転勤通知。 新幹線で2時間の距離。
「言われた時、駅のホームで手汗がすごくて、スマホ落としそうになった」
彼女はその後、遠距離を1年続けて結婚した。決め手は、転勤が決まる前から帯同するかどうかを話し合っていたこと。
話していなかった別のカップルは、通知の翌月に別れてる。
通知は3月と9月に集中する、と言った人が多かった。付き合って最初に迎える3月。そこで一度、話しておく。
飲み会の噂は、半分本当
付き合い始めた女性がいちばん気にしていたのが、夜の付き合い。
取材した男性行員のうち、上司に連れられて夜の店に行った経験があるのは2人。自分から行く人はゼロだった。 支店の飲み会は月に2回前後。断りにくいのは本当で、翌朝は目が腫れてる日もあるって笑ってた。
噂ほどじゃない。ゼロでもない。 そこを聞かずに想像で膨らませると、あとで自分の首を絞めるんだよ。
メガバンクと地銀と信金で、生活が違う
同じ銀行員でも中身はバラバラ。
メガバンクは全国転勤があり、部署の異動も多い。地銀は県内が中心で、地元に根を張る前提。信金は移動範囲がさらに狭くて、地域の行事に顔を出す機会が多い。
結婚後に地元を離れたくない人は、地銀か信金の人と相性がいい。 都市を渡り歩きたい人はメガバンク向き。
どの銀行の人と出会いたいかで、探す場所も変わるじゃん。
将来性が不安、という声
安定を求めて銀行員を探す人に、言いにくい話を先に。
取材した元銀行員2人は、どちらも30歳前後で転職していた。店舗が減り、支店の統廃合で異動が読めなくなったのが理由だって。
職業一つに安定を預けるより、お金の話ができる相手かどうかを見た方が、先が長い。 銀行員と付き合う価値は、肩書きより、その人が家計をどう扱うかに出るんだよなぁ。
後悔した人と、しなかった人の違い
付き合った経験者8人のうち、後悔したと話したのは2人。
共通してたのは、飲み会の頻度と休日の使い方を確かめないまま先に進んだこと。 後悔してない6人は、半年以内に転勤と共働きと休日の使い方を一度は話していた。
たったそれだけ。 そこができるかどうかで、先が変わる。
担当の銀行員が気になってしまった人へ
その親切、好意なのか仕事なのか
窓口や営業の担当者を好きになった話、実は3人分集まった。
うち1人は男性で、口座開設の時に対応してくれた女性行員に一目惚れ。 話しながら、彼の耳がじわじわ赤くなっていくのが見えて、こっちまで喉が渇いた。
3人のうち2人は、渡す前に自分から気持ちを引っ込めていた。相手の迷惑になる想像が先に立ったから。
見分け方として現役行員が挙げたのは、業務の範囲を超える一言があるかどうか。 手続きの説明が丁寧なのは仕事。天気の話や地元の話が向こうから出てくるなら、少し違う。
それでも接客の延長って線は消えない。 ここは断定しないでおくね。
連絡先を渡す前に知っておくこと
現役の行員が口をそろえた。勤務中は、お客様から連絡先を受け取れない決まりの店が多いって。
受け取れば上司への報告、断れば気まずさ。渡す側の一瞬の勇気が、相手の一日を重くする場合がある。
もし渡すなら、手続きが終わって店を出た後、相手が困らない形で。 受け取ってもらえない確率の方が高い。そこは覚悟の上で。
結ばれた人もいた
救いはある。 元行員の知人は、担当を外れてから常連のお客さんと街で再会して、そこから結婚した。
店を出た後の世界で会えるかどうか。勝負はそっち側にあるんだよ。
諦めた方がいいサイン
担当が変わったのに、連絡が一切来ない。 渡したメモに反応がない。
ここまで来たら、その人じゃなくて、銀行員という職業に惹かれているだけかもしれない。 だったら出会い方を変えればいいだけ。前半で書いた場所に戻ればいいさ。
銀行員の女性と出会いたい男性へ
求められているのは派手さじゃない
男性2人と、現役の女性行員2人にも話を聞いた。
女性行員が見ていたのは、清潔感と、時間を守るかどうか、あとお金の話を茶化さないか。 職業柄、遅刻と借金にはかなり厳しい目を持っている。会計のときに金額を口に出さない人が印象に残る、という話も出た。
支店の中で付き合うと噂が回るのが早いから、外で相手を探している女性行員はわりといる。 周りは20代後半で結婚した人が多いらしくてさ。付き合うなら、先を見ている前提で会った方が噛み合うよ。 行員の女性にも転勤や店舗の異動があるから、結婚後の働き方は早めに話しておきたいところ。
出会う場所は同じ、見せ方が違う
アプリでも同窓会でも、場所は女性側と変わらない。
違うのは、プロフィールの書き方。 年収の数字より、仕事の中身と休日の過ごし方を具体的に書いた人の方が返信が来る。行員の女性が打ち明けてくれた話。
数字で信用を測る相手に、数字で勝負しない。 ちょっと逆説っぽいけど、これが刺さるみたい。
今日からやること、動画の台本にしてみた
企画会議で実際に使った形で置いとくよ。
場面0、今日の帰り道。 プロフィール写真を普段着で一枚撮り直す。 自己紹介の末尾に、聞き役が得意と足す。 (この一行で変わるなら安いもん)
場面1、今夜。 アプリを開いて、検索条件を職業は金融、最終ログインは3日以内に変える。 自己紹介文に資格や部署の匂いがある人を5人だけ保存。 (うわ、思ったより多い…)
場面2、明日の朝。 高校か大学の同窓会グループを探して、次の開催を確認する。 なければ、幹事に一言だけ送る。 セリフは「久しぶり、次いつやる?」 (返事来なかったらどうしよ…いや、送る)
場面3、今週末。 アプリでやり取りが続いた人に、休日の過ごし方を聞く。 勉強してると返ってきたら、何の資格か聞いてみる。 ここで会話が続く人は、仕事の話を聞いてくれる相手を探している人。
場面4、初めて会う日。 店は自分から普通の値段の場所を提案する。 お金の使い方を見られている前提で、見栄を張らない。 帰り際に転勤の予定を軽く聞いておく。 (重い?いや、聞かない方が後で重い)
場面5、担当の行員が相手なら。 手続きが終わってから、店の外でメモを渡す。 受け取ってもらえなかったら、その日で区切る。 (ドクドクしてるけど、渡さないと一生このまま)
台本は6場面。 全部やっても、かかるのは1週間と少し。
ユカは場面2で止まって、結局、同窓会で会った銀行員と今も続いてる。 最初にスマホを向けてきたあの日から、半年。 ユカの動画は撮らなかった。本人が嫌がったから(笑)

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