バンギャは恋愛対象外?推し活と彼氏の両立、バンドマン恋愛の現実

深夜1時のファミレス。ライブ帰りの友人ユキの黒いネイルが、グラスの結露で光っていた。

「バンギャって彼氏できないんじゃなくてさ、作らないんだよね」
言い切ったあと、ストローをかじったまま黙る。窓に映った彼女のアイラインが少し落ちていたのを、私は見なかったことにした。

恋愛系のショート動画の企画のネタ集めでバンギャの友人や知人、飲みながら、ライブ帰りに、DMでいろいろ話を聞いた。出てきた悩みはどれも似ていた。

目次

バンギャがモテないと言われる理由を、分けて見る

品定めされる前に、そもそも会っていない

自己申告で最多だったのが、パンピにはモテない。パンピはバンギャ以外の一般の人を指す言葉ね。ただ細かく聞くと、フラれた経験より、出会っていない話のほうがずっと多かった。 平日は仕事、週末はライブハウス。合間はSNSで界隈の情報を追う。ここに一般の男性が入る隙間、正直言ってほぼない。しかもフロアは女性がほとんど。ギャ男と呼ばれるV系好きの男性は数が少ないし、いても取り合いさ。 モテないんじゃなくて、母数がゼロに近い。この差に自分で気づいている人、ほとんどいなかったわ。

見た目で切られるのは、最初の一秒だけ

濃いアイライン、黒い服、派手な髪色。職場に趣味を隠している人が大半で、理由は引かれるから。 ところが男性側の反応は少し違った。動画編集をしている後輩の男の子に、バンギャの子のライブ写真を見せた時の第一声。
「え、怖…。あ、でも普段もこんな感じなんですか?」 (お前の髪型も人のこと言えないんだが?)
最初の一秒でビビって、次の一秒で普段の姿を知りたがる。ジャッジは一瞬で終わり、その先は情報不足で止まっているだけ。普段の格好とライブの日の格好、両方見せれば評価は動く。肝心の、普段の姿を見せる場に出ていない。人数の話に戻ってくるじゃん。

お金と時間の使い方が丸見えになる

遠征、チケット、チェキ。月にいくら?と聞いたら、みんな急に時計を見る(笑) 金額そのものより、はぐらかした瞬間に目が泳ぐのが問題でさ。相手は金額じゃなく、隠す態度のほうに引く。先に、月このくらいでこれ以上は使わない、と言い切れる人は、意外と受け入れられていたよ。 知人のサエは三万と即答して、彼氏はその場で自分のゴルフ代を白状する羽目になった。額を自分で把握している人は、相手にも財布を開かせる。額を知らない人は、そこで会話が終わる。

界隈の中では、話が逆になる

同じ悩みでも、ライブハウス周りに目を向けると景色が変わる。狭いコミュニティで顔を合わせる回数が多いから、恋愛はふつうに始まる。物販の列で隣になった。遠征先のホテルが同じ。対バンの打ち上げで意気投合。聞いた出会いはどれも小さな偶然で、どれも近い距離で起きていた。 問題は別れたあと。世界が狭すぎて、次のライブで元カレと同じフロアに立つ。推しが被っていたら地獄よねぇ。界隈の恋は始まりやすくて、終わりにくい。

バンギャが趣味ごと愛されるために、最初にやること

隠して三ヶ月もった人を、まだ見ていない

一番痛かった話。友人のアヤは付き合って三ヶ月、彼氏に趣味を隠したまま遠征に行った。口実は友達の結婚式。 バレたのは、まさかのインスタのタグ付け。ライブハウスの前で撮った集合写真に、共通の知人が写っていた。
「彼からLINEが来て、画面見た瞬間、耳の奥がキーンってなって」
結局、問い詰められたのは趣味じゃない。嘘をついたこと。この二つは別物なのに、隠した側は趣味が原因だと思い込む。 ここ、発見だった。フラれた理由をバンギャであることに置くと、次の恋でも隠す。隠すと同じ嘘が要る。ループじゃん(泣)

打ち明ける時は、好きの前に予定と財布の話をする

うまくいっている人の伝え方には共通点があった。ヴィジュアル系が好き、と趣味の名前から入らない。
「月に2回くらい夜いない日がある。ライブ。予算は決めてて、それ以外の週末は空いてる」
生活の予定として言う。相手が知りたいのは音楽の中身じゃなく、自分の週末と財布にどう影響するかだけ。趣味の説明を長くするほど、相手は理解する義務を感じて疲れる。短く、数字と曜日で。 知人のカナはこれを初デートの帰り道に言った。返ってきたのは「じゃあその週末は俺も釣り行くわ」。拍子抜けするくらいあっさり(笑)
カナが後から漏らしたのは、説明しなくていいと分かった瞬間、肩の力が抜けて歩く速さが変わったってこと。趣味を守るための身構えって、自分で思うより体力を食うらしいよ。

推しがいるから恋愛いらない、が本音か逃げか

これ、本人にも判別が難しい。聞き取りの中で一つだけ、答えが割れる質問があった。 推しの結婚発表を想像したとき、体が先にどう反応するか。 祝福の言葉が浮かぶ人と、置いていかれる感覚で胃が重く沈む人。胃が沈んだ人は、推しを生きがいにしている自覚があった。同時に、自分の人生の予定を立てていない不安も抱えていた。 ユキの答えは、胃のほう。 恋愛いらない、が本音でも逃げでも、どっちでもいい。けど推しは、自分の人生を進めていく。その事実を先に胸に置いておくと、あとで殴られたみたいな衝撃を受けずに済む。

推し活と彼氏の両立が壊れる、隠れた理由

お金でも時間でもなく、順番で揉める

別れたケースを五組ほど聞いた。表向きの理由は金額か時間。爆発した場面は、五組とも同じ。 遠征の日程を先に押さえて、彼氏の誕生日や記念日をあとから調整しようとした時。 友人のマイの彼の一言。
「俺、その表のどこにいるの」
金額じゃない。予定表の中の自分の順位で傷ついていた。聞いた範囲では、推しの顔に嫉妬している彼氏は一人もいなくて、全員、順序に怒ってた。 別のケースでは、同棲中の彼の側の棚に遠征のグッズを置き始めた月から、彼が口をきかなくなった。これも金額じゃなく、自分の場所を侵された感覚。 マイ本人はあの時、遠征先のホテルでその一言を読み返して、シャワーも浴びずに寝落ちしたって。

彼氏の言い分を翻訳する

「そんなのに金使うの」は、俺には使わないの、と訳す。 「また行くの」は、俺との予定はいつ決まるの、という意味。 言葉の表面に反応して趣味を守ろうとすると、戦う相手を間違える。翻訳してから返事をするだけで、喧嘩は減っていたよ。 対処は一つ。彼との予定を、遠征より先に決めて見せる。

先後が見える形になると、彼は口を出さなくなる。マイは別れてからこれに気づいた。今の彼とは半年、揉めていないらしい。 彼氏に理解してもらう、という言い方をみんなするけど、理解が要るのは推しの魅力じゃない。自分が何番目かが分かれば、彼は勝手に納得する。

V系バンドマンと付き合いたい人に伝える現実

彼女になった人は、ステージの前に立っていなかった

V系バンドマンと付き合った経験がある人にも取材できた。出会い方で共通していたのがこれ。ファンとしてフロアに立っていた時期に、恋は始まっていない。 物販の手伝い、ライブハウスのバイト、同じ美容室、友人の紹介。会っていた場所はステージの横か外。 彼女になった人は、バンドの話をほとんどしなかったとも言っていた。ライブの感想を送るファンは大勢いる。晩ごはんの話をする人は少ない。差が出るのはそこさ。 落とし方の話じゃない。ファンでいる限り、相手にとって自分はファンの一人。そこから話が始まるってこと。

本命か、セカンドか、貢ぎ要員か

見分け方は三つとも、聞けば当たり前のことだった。連絡が来る時期が、ライブ前の集客期間に偏っていないか。会話にチケットや物販の話が混ざるかどうか。他のファンの前での扱い。 ライブ前だけ優しくて、終わると既読がつかない。この波があるなら、相手の中で自分は集客の一部。 知人のリカは二年通って、誕生日に彼から来たLINEがライブの告知だった。
「画面見て、手が冷たくなってさ。あ、私、数字だったんだって」 はぁ…。聞いているこっちも、グラスを持つ手が止まったよ。(二年って、二年だよ?)

付き合ったあとに待っているもの

ここからは付き合えた人の話。想像より地味で、想像より重い。 収入が不安定。ライブのあとの帰宅は深夜。女性ファンとの距離感を毎回気にする。匂わせにならないよう、二人の写真も残せない。彼女バレした時に叩かれるのは彼じゃなく自分。 口を揃えて言われたのがこれ。付き合った瞬間から、ステージの上の彼を前と同じ目で見られなくなる。 「ライブ中、あの人今日何食べたっけって考えてた」
好きだったキラキラが、暮らしの中で普通の男の人になる。推しを一人失う覚悟。これは付き合う前に飲み込んでおいてほしい。 結婚まで進んだ人は一人だけ。その人は、いつからかライブに行かなくなっていた。

ガチ恋をやめられない自分と、どう付き合うか

ガチ恋を笑う人がいる。でも職場の先輩に一目惚れするのと、深く知らない相手を好きになる点では同じ。恥じることじゃないっしょ。 ファンの一人から特別な一人になりたい。その気持ちの正体は恋というより、こっちを見てほしいという承認の話に近い。だから貢ぐほど満たされない。見てもらえた回数は、金額と比例しないから。 線引きは単純。使った金額で自分の扱いが決まる関係になっていないか。それはガチ恋じゃなくて課金。 月末に一度だけ、推しに使った額を書き出す。見たくない数字ほど、見ると重心が自分の側に戻ってくる。

今夜からできること、台本つき

彼氏がいない人の台本

今夜やるのはアプリのプロフィール文の書き換え。趣味欄にビジュアル系と書くだけだと、一秒で切られて終わる。趣味の名前じゃなく、週末と財布の話として書く。
「月2回ライブに行きます。その日以外はだいたい暇。喫茶店巡りに付き合ってくれる人募集」
写真はライブの日と普段の一枚ずつ。両方あると、怖いの次に来る知りたいが、そのまま会いたいに繋がる。一枚にしないこと。ここだけは譲れない!

彼氏がいる人の台本

今夜のLINE、一通目は自分の予定じゃなく相手の予定を聞く。
「来月さ、絶対空けてほしい日ある?」
返ってきた日を手帳に書いて、その写真を送る。そのあとでライブの日程と、代わりの日を出す。
「こっちは12日と26日、夜いない。19日は一日空けたから何する?」
代わりの日を先に差し出すと、奪われた感じが残らない。この順が逆だと、喧嘩の台本に化けるからね。

バンドマンと付き合いたい人の台本

次のライブでやることは二つ。チェキを一枚減らす。減らした分で帰りに何か食べて、味を覚えておく。 それとライブの感想を送らない。代わりに、彼が投稿した音楽以外の話題に一言だけ反応する。ラーメンの写真なら、そこ醤油が旨いですよね、で終わり。 ファンの列から一歩横にずれる。相手の中の自分の位置が少し動く。そこからやってみよう。

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