紙袋の中で、カサッと音がした。
友人のMが取り出したのは、赤い合格祈願のお守り。去年の秋、資格試験の三日前に職場の先輩から受け取ったものだそう。
「これって、どういう意味だと思う?」
恋愛系のショート動画のネタ集めにいろんな人の恋バナを聞き回ってるんだけど、お守りの話だけは毎回、空気が変わる。もらった側の声が一段低くなる。机の上の小さな袋を、なぜか二人で見つめてしまうし。
お守りをくれる男性は、あのとき何を考えていたのか
言葉にできない気持ちの、いちばん安全な置き場所
話を聞いた撮影を手伝ってくれてるカメラマンのRくんは、大学時代に気になっていた子へ健康守りを渡している。理由を聞いたら即答。
「プレゼントは重いし、LINEで頑張れは軽い。その真ん中がお守りだった」
聞いた瞬間、メモを取る手が止まった。お守りって、値段が読めないんだよ。数百円かもしれないし、千円ちょっとかもしれない。神社のものだから、受け取った側は捨てられない。それなのに、あなたの無事を願ってる、という意味だけははっきり届く。
好意を口に出せない人にとって、これほど都合のいい贈り物はないっしょ。断られても傷が浅い。受け取ってもらえたら、次に話しかける口実が手に入る。告白の練習台。Rくんの言葉を借りるなら、逃げ道つきの本気。
ちなみにRくんの相手は、そのお守りを財布に入れた写真を翌週に送ってきたそう。そこから付き合うまで一か月。写真一枚で、渡した側の不安が消えたんだって。
心配を形にしたかっただけの人もいる
ただ、全員が恋愛感情で渡してるわけじゃない。
知人のTさんは、体調を崩して休職していた時期に、同僚の男性から病気平癒のお守りを受け取った。復帰後にそれとなく聞いてみたら、妹さんが長く入院した経験があって、しんどそうな人を見ると何かせずにいられない性分だったらしい。恋愛の話は一ミリも出てこなかった(泣)。
心配を形にする人は、渡す相手を選ばない。あなた以外の誰かが弱っていたときにも、同じことをしているはず。彼が過去にほかの人へ何をしてきたか。ここを思い出せるかどうかで、読み違いがだいぶ減るよ。
配っている人は、渡し方に出る
冒頭のMの話。結局あの先輩、翌週に判明したんだけど、初詣のたびに部署の若手全員へ配っていた。Mの机に置かれたのも、隣の後輩の机に置かれたのも、まさかの同じ神社の同じ色。
はぁ…。配る人の特徴は意外と揃ってる。人前で渡す。袋のまま渡す。渡すときの言葉が短い。もらった側が試験の日程を伝えた覚えがないのに、なぜか届く。
あなたのために選んだ人は、あなたの予定を先に知っている。順番が逆なんだよね。
脈ありかどうかは、お守りより渡し方と、その後に出る
授与日と手渡し日のあいだ
聞き取りをしていて、最も役に立った判定軸がこれ。
お守りの袋や札には神社の名前が入ってる。その神社がどこにあって、彼がいつ行ったのか。神社名で調べれば場所の見当はつくし、初詣で行く神社かどうかもだいたい分かる。正月に行った神社のお守りが四月に出てきたなら、配り残しの線が濃い。あなたの試験日の直前に、わざわざ近所の神社まで足を運んでいたなら、目的はあなたひとり。
旅行先のお守りは、お土産の顔をしている。ただし、旅行先で縁結びを選ぶのは、選ぶ時点であなたの顔が浮かんでるってこと。授与所には何種類も並んでいて、その中から一つを手に取る動作が、すでに答えなんだよなぁ。
私だけ?を確かめる方法
本人に聞くのは気が引ける。わかる。だから聞かない。
同じ部署の人、同じサークルの人が同じ神社のお守りを持っていないか、それだけ見ておく。二人以上見つかったら配りもの。見つからなくて、彼がその神社の話を誰にもしていないなら、あなた専用の線が太くなる。
(探偵かよ、私)って自分でも思うけど、勘違いして三か月浮かれるより、三日探るほうがマジで軽く済むじゃん。
渡した後に、結果を聞いてくるか
最強のサインはこれ。
お守りには、後日を作る力がある。試験どうだった。体調どう。あの日、無事に着いた。渡した人は、それを聞く権利を手に入れる。その権利を、本気の人ほど使いたがるんだよね。合格発表の日にLINEが来る。復帰初日に真っ先に声をかけてくる。
Mの場合は、試験の結果を先輩へ自分から報告するまで、何ひとつ来なかった。配る人は、配った時点で用事が終わってるから。
反対に、結果を聞いてきた上で次の話に繋げようとする人。お祝いしようよ、今度はこっちの神社も行こうよ。ここまで出てきたら、もうお守りの話じゃない。
脈なしの顔をしたお守り
はっきり脈なし寄りなのは、あなたの目の前でほかの女性にも渡している。渡すときに目を合わせない。お守りの種類を本人が覚えてなかった。この三つが揃ったら、あなた個人への意味はほぼ乗ってないと見ていい。
ちなみに私、聞き取り中にこの三つを食い気味に確認しすぎて、友人に「取り調べかよ」って引かれたんだけど(笑)。それくらい、もらった側は自分に都合よく読みたくなる。読みたくなる自分ごと、判定に入れておくといいよ。
種類でわかる本音
縁結びは、本気かネタか、どっちかしかない
縁結びのお守りを男性から受け取ると、頭の中が二つに割れる。私とのご縁? それとも冗談?
企画で集めた話の中では、本気と冗談のどちらかしかなかった。中間がない。見るべきは、渡すときに彼が言い訳をつけたかどうか。
知人のSさんは、男友達から縁結び守りを受け取った。渡された瞬間、彼が先に「ネタだから」と言ったらしい。三か月後、その男友達から告白されてる!言い訳を先に置く人は、逃げ道を作ってから本気を通そうとしてる。ネタだから、の一言は、断られたときの保険。
冗談で渡す人は、渡した後にその話題を引っ張らない。本気の人は、あなたがそのお守りをどこに付けたかを気にする。
健康と厄除けは、あなたが弱っていた証拠
健康守りには、あなたの体調不良や大きな出来事を彼が知っていた、という前提がある。知っていて、放っておけなかった。Tさんの同僚みたいに誰にでもそうする人もいるし、あなただからそうした人もいる。
見分けるなら、渡した後に体調を聞き続けるかどうか。一度聞いて終わりなら、優しさの範囲。二週間後にまだ聞いてくるなら、心配の対象があなた本人に絞られている。
合格・仕事・交通安全は、別れ際に出やすい
合格祈願は出来事に紐づく。仕事の成功祈願も同じ。ここは前の章の判定がそのまま使える。
交通安全と旅行安全は少し違う。転勤、留学、長期出張。物理的に離れる直前に渡されやすくて、無事でいてほしい、の裏に、この関係を切りたくない、が混ざる。
後輩のKは、異動で県外へ発つ日の朝、同期の男性から交通安全のお守りを渡された。駅のホーム。突然差し出された彼の指先が、冷たかったのを覚えてるって。その彼、今は毎月Kのいる県まで通ってる。
渡すときのセリフでも読める
セリフにも本気度が出る。試験の日、これ持ってって、なら出来事向き。ずっと持ってて、なら期限がない。期限のないお守りは、あなたと続く時間を前提にしてるんだよ。
相手別の温度差
職場の男性
職場のお守りは、渡す人の立場でほぼ決まる。上司や年の離れた先輩からなら、部下への気配りの延長。Mの先輩がそう。同期や年齢の近い同僚から、しかも二人きりのときに渡されたなら、話が変わる。聞いた中で熱があったのは、給湯室に誰もいない時間を狙って渡されたケース。渡す場所を選ぶ手間は、そのまま気持ちの量。
職場は失敗できない場所だから、お礼は仕事の範囲に収めておく。それでも彼が個人的な連絡に切り替えてきたら、そのとき考えればいい。先に動くのは彼の役目。
男友達
長く友達をやってる男性がお守りをくれるとき、中身が縁結びなら、友達の枠から出たいしるしとして受け取っていい。Sさんの例がまさにそれ。友達の枠を守りたい人は、縁結びだけは避けるんだよね。健康や合格なら、友情の延長として受け取って問題なし。
元彼
元彼からのお守りは、復縁の意思と直結しない。未練で渡す人もいれば、別れ方が雑だった罪悪感を清算したくて渡す人もいる。聞いた範囲では、清算のほうが目立った。
受け取ってもいい。ただ、お礼は一往復で終わらせる。返事を長くすると、区切りをつけたかった相手を引き戻してしまう。
付き合う前、デートを重ねている相手
ここはもう迷わなくていい。何度か二人で会っている相手がお守りを渡してくるのは、次の段階に進みたいけど自分からは言い出せない、の合図。彼はあなたの反応を待っている。だから、この記事の最後にある台本が、ここに効く。
お礼と返し方、今日から使える台本
受け取った瞬間の三秒
場面は、渡された直後。手元のお守りを見る。彼の顔を見る。ここで、ありがとう、だけで終わらせない。お守りの中身を一つ、口に出す。
「合格祈願だ。試験の日、これ持っていく」
これだけで、彼は自分の選んだ種類が伝わったことを知る。あなたがそれを使う予定があることも。渡した側が何より怖いのは、引き出しの奥にしまわれることだから。
その日の夜のLINE
帰宅後。スマホを開く。指が止まる。長文を打っては消して、打っては消して。……わかる。ドクンドクンいってるときに文章は書けないよ。
型を先に決めておく。三文だけ。受け取った事実。どこに付けたか。次の報告の予告。
今日はお守りありがとう。カバンの内ポケットに付けた。試験終わったら結果報告させてね。
これで終わり。好きとか特別とか、一文字も入れない。それでも、報告させてね、の一言が次の連絡を約束してくれる。お守りが作った後日を、こっちからも受け取りにいく感じ。
やりがちなNGの返し方
高価なお返し。数百円のお守りに数千円の品を返すと、彼は自分の贈り物が重かったのかと読む。既読だけつけて、翌日まとめてお礼。渡した側は、その夜に何か来るかどうかを見てる。
あとは、返事で気持ちを先に言いすぎること。友人のひとりは縁結び守りをもらった夜に、実は前から気になってた、と送って、相手が三日消えた(泣)。彼が逃げ道つきで渡したものに、逃げ道のない返事をぶつけるとこうなる。歩幅は彼に合わせる。
お返しは物より報告
お返しに物を贈ると、そこで話が完結してしまう。もらった、返した、おしまい。関係を進めたいなら、お返しは結果の報告にする。
合格した日、復帰した日、無事に着いた日。その日のうちに、お守りの写真と一緒に一言。あのときのお守り、ちゃんと仕事してくれた。これだけで、彼は自分が渡したものに意味があったと確認できる。
職場なら、報告に小さいお菓子を添える。個包装で、五百円以下。これは職場の礼儀に収めるためであって、彼への気持ちの大きさとは切り離していい。
報告の日に、一歩だけ踏み出す
誘いやすさで言えば、結果報告の直後に勝る瞬間はない。
報告のLINEを送る。返事が来る。(きた……)おめでとう、とか、よかった、とか。そこに一文足す。
お礼したいから、今度ご飯行かせて。神社にお礼参りも行きたいし、よかったら一緒に。
お礼参り、って言葉がずるすぎ!お守りをくれた人と一緒に返しに行くのは、筋が通っていて断りにくい。Kと同期の彼は、まさにこの流れで初デートになった。ホームで渡された交通安全守りを、二人で神社へ返しに行ったんだって。
正直言って、お守りの話は勘違いと隣り合わせ。Mみたいに空振りすることもある。それでも、渡した側が本気なら、あなたの無事をあの人はまだ気にしてる。報告の一通が、その気持ちの答え合わせになるよ。

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