「男友達は増えるのに、彼氏だけできないんだよね」
兄がいる27歳のミサキがそう言った瞬間、アイスコーヒーの氷がカランと鳴った。恋愛ショート動画の制作チームで、ショート向けのネタ出しをしていた時の話。企画のために、兄がいる女性12人と、兄がいる女性を本気で好きになった男性8人に話を聞いて回っていた。
似たセリフは12人中9人から出てきた。言い方は違っても中身は同じ。仲良くなるのは早い。なのに彼女の枠だけ空いたまま。
兄がいる女性の恋愛が気になってる人は、自分が兄のいる妹で、なんで友達止まりになるのか知りたい女性。それと、兄がいる女性を好きになって、あの距離の近さが脈ありなのか癖なのか読めずに困っている男性。立場は真逆なのに、聞きたいことは一つに絞れる。男慣れの裏側で、本命の席はどうやったら埋まるのか。
兄がいる女性の特徴、リサーチで浮かんだ共通点
男性を前にして構えない
12人のうち11人が、男子と話すのは楽と言い切った。兄の友達が家に出入りする環境で育つと、男性は珍しい生き物じゃなくなる。リビングでゲームをしている隣の人。声のトーンが変わらないし、目も逸らさない。女友達と同じ距離で肩を叩く。少年漫画や格闘ゲームの話題にそのまま乗れるし、下ネタで顔色ひとつ変えない。気を抜くと男言葉がぽろっと出る子も三人いた(笑)。女子の群れより男子とつるむ方がラク、という声もちらほら。兄の友達をお兄ちゃんの続きとして見てきたから、年上の男性にも物怖じしない。バイト先の店長、取引先、教授。年齢差のある相手と普通に話せるのも、ここから来ている。
面倒見がいいのに、自分の甘えは下手
兄の友達から恋愛相談を受けていた子が意外と多くてさ。人の面倒は見る。話も聞く。自分が甘える番になった途端、二つに割れる。甘えすぎて重いと言われる派と、甘えたことが一度もない派。恋愛の悩みを聞いたアンケートでも、兄がいる女性から、甘えすぎて重いと言われるという回答があったよ。同じ環境で育って正反対に振れるのが面白いところ。兄が甘やかすタイプだったか、突き放すタイプだったかで分かれている感じだった。
恋に落ちるスイッチが遅い
兄の脱ぎっぱなしの靴下。朝の機嫌の悪さ。彼女に振られて号泣していた背中も見てきた。男性への幻想が、恋を始める前に壊れているんだよね。だからときめきの爆発が起きにくい。周りからは冷めてると言われる。本人は冷めているつもりがない。ここ、あとで効いてくる。年上に惹かれやすいのも同じ流れ。20歳以上年上の男性と付き合ったり結婚したりした人には、兄や姉がいる割合が高かった。
好きになるのは、兄に似た人か、兄にないものを持つ人
好きなタイプを聞くと、答えが二つに寄る。兄みたいに口が悪くて面倒見がいい人。もしくは、兄が一度もしてくれなかったことをしてくれる人。25歳のアヤは、兄が無口だったから、感情をそのまま口にする男性に弱いんだとか。兄と仲がいい子だと、兄と似た空気の人を選びがち。どちらにしても、比べる軸に兄がいるのは変わらない。本人はそこに気づいていないことが多くて、聞き返すと三秒くらい黙る。あ、そうかも、という顔で。
恋愛がうまくいかない五つの理由と、それぞれの抜け方
一つ目、最初から男友達の席に座ってしまう
距離が近い。それ自体は魅力なんだけど、近すぎると異性としての緊張が発生しない。緊張がないと、相手の脳内で彼女候補のフォルダに入らない。仲良くなる速度と、恋愛対象に上がる速度は別物ってこと。抜け方は一つ。全員に近い距離を、一人にだけ少し遠くする。いつもの肩へのタッチをやめる。二人のときだけ敬語混じりで話す。それだけで相手の中に、あれ?という引っかかりが生まれる。24歳のナナはこれを十日ほど続けて、相手から、最近なんか距離あるよね、と聞かれたそう。そこで初めて、向こうが自分を意識した。近いのが普通だった相手には、遠さの方が刺激になる。
二つ目、兄が採点基準になっている
31歳のユカの話が刺さった。彼氏が頼んだパスタを一口もくれなかった夜のこと。兄なら絶対くれるのに、と思った瞬間、気持ちがスッと引いたんだって。比べる相手、そこ?と喉まで出かかった。でも聞いているうちに、背中がざわっとした。初めから自分に優しくて、それでいて恋愛対象じゃない男が基準にいる。彼氏はそのハードルを、付き合って三か月で越えないといけない。無理でしょ!
理想が高いと言われるのはこれで、本人に高くしている自覚はない。ほどき方は、兄なら、と浮かんだ瞬間に、兄が自分の彼女にどう接していたかを思い出すこと。妹には優しくても彼女には雑だった兄、割といるよね。基準にしていたのは兄じゃなくて、妹に向けた兄の顔。そこに気づくと減点が止まる。ユカはその後、兄に、彼女できたときどうしてた?と聞いてみたと言う。返ってきた答えは、覚えてない。減点の基準にしていた人が、自分の彼女のことすら覚えていない。翌日、彼氏に自分からパスタを一口ねだった。もらえたって。
三つ目、甘え方の癖が量で暴走している
甘えすぎる子は、量で愛を測ろうとして重くなる。甘えられない子は、頼んだら負けだと思っている。どちらも甘えの量を調整しようとして失敗する。結局、変えるのは量じゃなくて中身。頼む内容を小さく、具体的にする。次の日曜、駅まで迎えに来て。この一つで足りる。
重い子はここに絞る練習。甘えるのが苦手な子は、口に出すところから。方向は逆でも、口にする一文は同じ。頼み方にも型がある。理由をつけない。駅まで迎えに来て、の後ろに、疲れてるから、を足すと途端に重くなる。理由は相手が勝手に想像してくれるから、こっちは言わないでいい。普段甘えない子ほど理由を三つ並べて頼んでいて、そりゃ重いわ、と言いかけて飲み込んだ。
四つ目、ときめかない自分を冷めていると誤解する
幻想がないから、ドキドキで恋が始まらない。始まらないのに、始まりはドキドキのはずだと信じている。その分、安心する相手を友達だと処理してしまう。もったいなさすぎ!兄がいる女性の恋は、安心が入口で、ときめきは後から来る。順番が逆なだけ。やることは、一緒にいて呼吸が浅くならない相手を、恋の候補に入れておくこと。
26歳のリコは、一緒にいると眠くなる男友達を三年間、圏外に置いていた。ドキドキしないから。取材の帰り道にその彼と歩いていて、足音が揃っていることに気づいたと、翌週に連絡が来た。眠くなるのは退屈じゃなくて、警戒が解けているから。兄と並んでソファにいるときの体に近い。
五つ目、兄との関係が悪いと男性不信が残る
12人の中に、兄と口をきいていない子が二人いた。一人は男性全般に壁があって、もう一人はまったく影響がないと言う。何歳差なら残るのか、どんな不仲だと残るのか、聞いた範囲では決まらなかった。ただ、壁がある子が漏らした一言は残っている。「男の機嫌をうかがう癖が抜けない」。
兄と彼を同じ棚に置かない、と言うのは簡単で、実際は棚が一つしかない状態なんだよね。だから急がない。彼の機嫌を三回うかがったら、三回目は黙ってみる。それくらいの歩幅でいい。壁がある子には、別の癖もあった。優しくされると裏を疑う。兄の優しさが、あとで何かを要求される前触れだった記憶があるから。彼が普通に優しいだけの日を、指で数えてみる。数えているうちに、疑う回数の方が減っていく。
兄がいる女性を好きになった男性へ、落とし方と脈ありサイン
男慣れと脈ありは、一点で見分ける
彼女の近さは、誰にでも出す初期装備だと思っておいてね。見るのは、あなたにだけ出す行動があるかどうか。29歳のケンタが教えてくれたのは、兄の話が出るタイミング。「兄貴が今度結婚するんだけどさ」と言われたのが始まりだったらしい。兄がいる女性は、身内の話を全員にはしない。もう一つは頼みごと。甘え下手な子が小さいお願いをしてきたら、かなり奥の席に呼ばれている。逆に、男友達と同じテンションでいじられているだけなら、まだ玄関先。
脈ありサインは、引き算で出る
増える行動より、減る行動の方がわかりやすい。あなたの前でだけ、男言葉が減る。いじりが減る。他の男友達の話が減る。兄がいる女性は、好きな人の前で女らしさを足すのが下手で、代わりに慣れた振る舞いを引き算する。ケンタの場合は、それまで毎回だった肩へのパンチが、ある日を境に消えたと話していた。足されたものを探すと見落とすよ。
兄の隣ではなく、兄にない席を取る
兄と張り合うと負ける。歴史が違いすぎるから。兄は守る側の椅子に座っていて、そこはもう埋まっている。空いているのは、対等に頼る側。彼女に相談をする。決めてもらう。兄は妹に相談しないでしょ。相談は、兄がやらなかった行動として彼女の胸に残る。守ろうとするより先に、頼ってみる。この順番が逆だと、二人目の兄になって終わるよ。
やってはいけないアプローチ
急なボディタッチ。女扱いの押し売り。この二つは、兄の友達が昔やって撃沈した場面を彼女はもう見ている。あと一つ、他の男友達との距離を責めること。彼女にとってあれは呼吸と同じで、責められると息ができない。兄の悪口も禁止。距離があるように見えて、兄は彼女の一部だから。
付き合ってから長続きさせるコツ
付き合ったあとに揉めるのは、彼女の男友達の多さと、兄との近さ。ここを削らせようとした男性は、8人中3人が振られていた。長く続いている組に共通していたのは、兄に会いに行っていること。兄公認になると、彼女の中であなたの席が家族側に一つ寄る。兄と飲みに行ってきた夜、彼女が急に素直になった、という話を二人の男性から聞いた。守るより、混ざる。
今日から使える台本
本人向け、三秒で友達枠を外す
場面は、いつもの男友達数人との帰り道。一人だけ気になる相手がいる前提で。
全員にはいつも通り、肩を叩いて笑う。気になる相手にだけ、叩かない。改札の前で一秒だけ目を合わせて、小さい声で言う。「今日、ありがとね」。それだけ。翌日、LINEで頼みごとを一つ。
「この前言ってた店、今度連れてって」。
重い子はこの二回で止める。甘えるのが苦手なら、この二回分だけ勇気を出す。二週間で相手が変わるかは、正直言ってやってみないと読めない。それでも試した三人は全員、相手の返信速度が変わったと言っていた。三回目は、相手の話を聞く側に回る。兄の友達の相談を受けていたあの聞き方を、気になる相手にだけ使う。全員に配っていたものを一人に絞るだけで、渡す量は変わらないのに濃度が変わる。
男性向け、特別枠に入るひと言
舞台は、二人で飲んだ帰り。
彼女がいつものノリでいじってきたら、乗ったあとに一拍置いて、真顔で言う。「ちょっと相談していい?」。内容は仕事でも家族でもいい。彼女が聞く側に回った瞬間、あなたは男友達の列から外れる。次に会うときは、彼女の兄の話を一つ聞く。「お兄さん、どんな人?」。答え方で、席が空いているかわかる。ここで兄を褒めすぎない。「ちょっと妬けるかも」くらいでちょうどいいよ。

コメント